「帝王切開で生まれた子供は肥満になりやすい」という研究結果がアメリカで発表されました。
私自身も、帝王切開で子供を産んだ一人です。
子供の将来を想うと不安になりますよね。
真相はどうなのか、徹底的に調べてみました。
パッと読むための目次
「帝王切開で生まれた子供は肥満になりやすい」ってそもそもどこからの情報?
2016年にアメリカのハーバード公衆衛生大学院が発表した
「帝王切開によって生まれた子どもが肥満になる可能性は自然分娩児より15%高く、母親の体重とは無関係」
という研究結果の情報です。
参照:Children born by C-section have higher risk of obesity later in life
肥満体国のアメリカでは、「肥満」に対する研究が盛んに行われています。
「帝王切開」と「肥満」に関する研究は、1996年から9~14歳の1万6882人を対象に調査が始まり、2004年にはさらに9~14歳の1万923人が追加されました。
1997年から2001年までは毎年、それ以降は2年ごとにアンケートが実施されています。
出産時の親の年齢、人種、出産地域、妊娠前のBMI、出産時の体重、喫煙の有無、赤ちゃんの性別、出産の順番など、さまざまな要素を踏まえた上で精査されました。
その結果、帝王切開で生まれた子供は、幼児~青少年期において肥満になりやすいことが判明したのです。
同じ家庭に育ちながら、違う出産方法で生まれた子供たちも対象にしており、帝王切開で生まれた子供は肥満になる確率が64%も高いそうです。
なぜ帝王切開で生まれたら肥満になりやすいの?
原因としては、産まれて最初に触れる「菌」が影響していると考えられています。
最初に母親の膣内や腸内の細菌に触れる
最初に母親の皮膚や手術室の空気中にある細菌に触れる
この「菌」の違いが「肥満」に影響していると考えられています。
マウスを使った実験
この、ハーバード大学の発表を受けて、アメリカのニューヨーク大学微生物学者マリア・ドミンゲス・ベッロ博士らの研究チームがマウスを使って実験しました。
全く同じ条件で、飼育し妊娠した母マウスたちのうち34匹は帝王切開で、35匹は自然分娩で出産させ、生まれた子マウスを大人になるまで飼育。
子マウスたちの成長過程で、細菌組成を分析するため、採血や組織採取を行い細菌のDNAを抽出し分析した。
細菌分析の結果、自然分娩の子マウスの腸内には体重減少に影響しているとされるバクテロイデス属、クロストリジウム属、ルミノコッカス属の細菌が存在していました。
しかし、帝王切開の子マウスの腸内にはこれらの細菌が存在していないことがわかりました。
さらに、自然分娩の子マウスの腸内フローラ(腸内細菌叢)は、大人になるまでに正常に成熟したのですが、帝王切開の子マウスは未成熟なままでした。
また、気になる両マウスの体重差ですが、帝王切開の子マウスの体重は15週時点で自然分娩の子マウスより平均33%増加していました。
特にメスの子マウスに顕著だった事をふまえると、女の子の方が肥満になりやすいと思われます。
どうすれば帝王切開でも肥満にならないの?
帝王切開の場合、「最初に母親の膣内や腸内の細菌に触れる」ことが出来ない為、必要な腸内細菌が獲得できず、肥満になりやすいと考えられています。
実際に、帝王切開で生まれたばかりの新生児に、母親の持っている腸内細菌などを与えるため、新生児の皮膚に膣液を擦りつける「膣播種」と呼ばれる行為が欧米では流行しています。
欧米では帝王切開の実施率が高く、
英国で25~30%
デンマークで15~25%
帝王切開が子どもに与える影響を気にする親は多く、デンマーク産科婦人学会では、
「(デンマーク国内の)産婦人科医の90%以上が出産を予定している両親から膣播種の有効性を確認された経験があった」
としています。
また、実験でも、帝王切開で生まれた新生児の顔や体に、綿棒で採取した母親の膣液を塗布したところ、母親の細菌叢が子どもにも移入できたとしていました。
しかし、「膣播種」に関する研究の実験は1例のみで、その被験者数はわずか4人。
しかも、膣播種の効果は検証されておらず、あくまでも母親の細菌叢と同じ細菌が子どもにも移ったかを確認したのみだったそうです。
それをふまえて、調査を行ったデンマークの医師の間では
「綿棒には出産時とまったく同じ細菌が含まれていない可能性があり、繁殖中に膣内の血液や羊水のために細菌がより希釈されている可能性もあります。」
としています。
逆に、新生児が大腸菌やその他の有害な細菌、性感染症などに感染するリスクを上げている可能性があるとも指摘しています。
安易に膣播種をしてはいけない
こうした結果を踏まえ、デンマーク産婦人科学会は、
明確な研究結果が発表されるまで、膣播種は推奨されない
としています。
デンマーク産婦人科学会は
「一般的な肌の接触で十分効果があることはエビデンス(科学的な根拠)が確立されている」
と発表しています。
例えば、母乳育児は母乳や母親の肌との接触を通して、細菌が子どもに移入されることがわかっています。
また、母乳育児でなくても、新生児と母親の一般的な肌の触れ合いで、十分に効果が期待できるとされています。
一番大切なことは、母子接触の時間を十分確保することのようです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
私は、帝王切開で出産した子どもが肥満になりやすいなんて、全然知りませんでした。
実際、1人目(普通分娩)と2人目(帝王切開)の子供を育てていますが、2人目の方が太っているとかは、今のところありません。
また、成長曲線の平均と見比べても、大した差はありませんし、むしろ小さめなくらいです。
今後、どう成長していくのか不安な部分もありますが、普通分娩でも食べ過ぎれば肥満になるので、気にしすぎず成長を見守りたいと思います。