経腟分娩とは異なる帝王切開での出産は、昔から「母乳が出にくい」などといわれることがあります。
母乳で赤ちゃんを育てたいと考えているママにとって、出にくいのは大きな悩みですよね。
この記事は、帝王切開ママの悩める母乳育児についての疑問をまとめています。
パッと読むための目次
そもそも母乳ってどんな仕組みになってるの?
母乳が出るスイッチは「胎盤の排出」
妊娠中はどれだけ乳房が発達しても、母乳を抑制するホルモンの影響で、めったに出ることはありません。
母乳が出るスイッチは「胎盤の排出」にあります。
出産後、胎盤が排出されると、妊娠中「母乳を抑制していたホルモン」が切り替わり、今度は母乳をよく出そうとする「オキシトシン」というホルモンが働き始めます。
ではなぜ帝王切開は母乳が出にくいと言われているの?
原因1:母乳を出すホルモンの分泌量
母乳を出すホルモンは確かに「胎盤の排出」後に出るのですが、赤ちゃんがおっぱいを吸う「乳首への刺激」によって、より多く分泌されます。
しかし、帝王切開の場合、傷の痛みによって起き上がることさえ難しく、歩くのに慣れるまでも時間がかかります。
そうなると赤ちゃんにおっぱいをあげる事自体が大変なので、乳首への刺激が与えられず、母乳が出にくくなる原因となります。
原因2:血液不足
帝王切開は手術でお腹を切るため、大抵の場合自然分娩よりも出血が多くなります。
また、出産後に悪露が始まる影響もあり血液が不足しがちです。
母乳はママの血液から作られます。
ですから、血液が不足していると母乳を生成するのに影響が出てしまいます。
原因3:血行が悪い
帝王切開手術後は傷の痛みのため、ほぼ寝たきり状態になります。
その為、「運動不足」で血行が悪くなり、母乳の出を妨げる原因となってしまいます。
帝王切開手術後「麻酔薬」が母乳に与える影響
通常分娩ママの場合、出産後1時間前後で、初乳を与えるのが一般的です。
帝王切開の場合も、基本的に母体・胎児に問題がない場合は、普通に授乳が許可される場合が多いです。
ただし、産院によっても方針が異なり、帝王切開手術で使用した麻酔の種類によっても変わってきます。
脊髄、硬膜外麻酔の場合
俗にいう「部分麻酔」というやつです。
部分麻酔での帝王切開出産の場合は、一般的な出産同様、術後1時間程度で初乳を与えることができます。
脊髄や膜下麻酔の場合、神経の近くに処置を行うため、全身を回る麻酔量は大変少ないとされています。
そのため、胎児への麻酔の影響はほとんどなく、母乳も安心して与えることができます。
傷の具合や、病院の方針にもよりますが「スキンtoスキンコンタクト」や「カンガルーケア」で初乳の授乳を行っても、問題はないとされています。
全身麻酔の場合
基本的には麻酔から覚め、お母さんが授乳できる準備が整えば、初乳を与えることができます。
目安としては術後4時間といわれています。
部分麻酔とは異なり、全身に回る薬の量は多くなりますが、赤ちゃんへの影響は少ないとされています。
赤ちゃんが眠くなる、呼吸が弱くなるなどのケースも実際にあるようですが、薬の作用が減少することで症状が改善される程度ですので、初乳を与えても問題はありません。
初乳には、生まれたばかりの赤ちゃんを守る免疫物質が多く含まれており、生まれた赤ちゃんを守る唯一の防御策です。
体調など問題がないようであれば、できるだけ初乳を与えることが大切です。
初乳を与えられないのはどんな時?
◎病院側の意向
病院によってはお母さんの回復を待って、次の日から母乳を与える方針の所もあるようです。
◎赤ちゃんが原因
未熟児などの何らかの原因で、NICUに赤ちゃんが入院している場合は、直乳ができず、搾乳で母乳をあげるなど、与え方が限られてくる場合もあります。
◎ママが原因
血圧が高い、蛋白尿があるなど、ママの健康状態によっても授乳が禁止されることもありますので、その場合は医師の指示に従ってください。
帝王切開手術後「痛み止め薬」が母乳に与える影響
通常で用いられる痛み止め薬であれば、赤ちゃんへの影響はほとんどないと考えられています。
むしろ、痛み止めを上手く使いながら、リラックスして授乳することが、赤ちゃんにとっても母乳にとっても良いことです。
帝王切開でも母乳を出やすくする方法
1. 授乳回数を増やす
赤ちゃんに乳首を吸ってもらい、刺激を与えましょう。
母乳を作るホルモンが刺激され、授乳回数が多いほど出やすくなります。
赤ちゃんの睡眠時間が長くて授乳できない場合や、赤ちゃんがうまく母乳を飲めない場合は、搾乳をするのも一つの方法です。
搾乳でも乳頭を刺激することはできます。
毎日短時間でも、定期的に乳首を刺激し母乳を出すことが母乳育児への近道です。
2. 水分をたくさんとる
母乳はママの血液から作られています。
血液を作るには水分が必要です。
帝王切開ママは特に血液が不足しがちなので、意識して水分をたくさんとりましょう。
体を冷やさないように、できれば常温の飲み物がおすすめです。
ミネラルが豊富な「麦茶」や、母乳の出がよくなると言われている「たんぽぽ茶」などのハーブティも授乳中のママに人気です。
3.血行を良くする
帝王切開の場合、体を動かすことは一番辛い事かもしれませんが、寝たきりで血行が悪いと母乳が出にくくなります。
まずは、家の中で出来る軽いストレッチでも良いので、体を動かしてみて下さい。
4. 締め付けの少ない服装にする
ブラジャーのサイズが合っていないと乳房付近の血行が悪くなって母乳が詰まりやすくなります。
出産後は授乳用のブラジャーの着用をお勧めします。
冷えも禁物ですので、靴下や腹巻など、冷えやすい体の末端やおなかをカバーするアイテムを活用しましょう。
5. ストレスを解消する
お腹の傷や、夜中の授乳などの慣れない育児。
睡眠不足や疲れがたまりイライラや不安が原因で、母乳が出にくくなることがあります。
昔は「脂っこいもの」や「糖分の高いもの」を食べたら母乳がつまって出にくくなると言われていました。
が、今はママのストレスや疲れの方が、母乳が出にくくなるのではないかと考えられています。
ですから
- 赤ちゃんがお昼寝したら一緒に寝る
- 食事を抜かずに、赤ちゃんのお世話の合間に好きなものを食べる
- 天気のいい日は買い物がてら散歩に出かける
など、疲れやストレスをためないように心がけましょう。
母乳外来に行くのは勇気がいるかもしれませんが、プロに乳房マッサージをしてもらうと、驚くほど母乳が出ることもあります。
自分では無理と言う人は、一度母乳外来に行ってみて下さいね。
まとめ
帝王切開は自然分娩に比べると、母乳が出にくくなってしまうのは事実でした。
また「麻酔薬」や「痛み止め薬」の影響は母乳にはほとんど無いということも分かりました。
母乳の出を気にするママも多いと思いますが、まずはお腹の傷の回復を第一に考えましょう。
母乳出にくくても、ミルクで丈夫に大きく育っている赤ちゃんはたくさんいますので、過度に気を落とさず、自分なりの育児ライフを楽しんでみて下さいね。